GrASPの取り組み

「できる」を引き出す、ささやかな工夫

tsumugi

こんにちは。GrASPスタッフのアリーです。

ある日の昼食時のことです。
いつもはゆっくりながらも食事が進むメンバーさんが、その日は少し戸惑った表情をしてスプーンを持っていました。
そこで、スタッフがテーブルの高さを少しだけ上げてみると――
不思議なことに、その方の手が自然と動き出し、みるみるうちに食事が進んでいきました。

「声をかけても変わらなかったのに、テーブルの高さを変えただけでこんなに…?」

そのとき、環境の力の大きさを改めて感じました。

GrASPで働いていると、“できない”ことが“できる”ことに変わる瞬間は、気合いや根性ではなく、ほんの少しの“環境調整”で生まれることが多いと気づきます。

例えば――

  • 声かけでは伝わらなくても、ジェスチャーや簡単なメモにするとすっと理解できることがあること。
  • 窓の外の景色が気になって落ち着かない方に、席の向きを少し変えると集中できるようになること。
  • 食器の色や食具が変わるだけで、食事をよく認識できて残さず食べていただけるようになること。

こうした“環境が変わるだけで行動が変わる”現象は、実は認知症ケアの研究分野でも数多く指摘されているそうです。人の認知や注意の向き方は「言葉」よりも「視覚・距離感・周囲の刺激」に左右されることがあり、環境調整は“支援”というよりも、その人の力を引き出すための土台づくりなのだそうです。

私はまだ経験が浅いので、「どうしたら伝わるんだろう?」「どうしたらスムーズにできるかな?」と日々試行錯誤の連続です。

でも、先輩がたが様々な工夫をさりげなく実践している姿を見るたび、ケアの奥深さにハッとさせられます。

“できないことをサポートする”のではなく、“その人ができる環境を整える”。

その視点に立つと、ケアはぐっと柔らかく、そしてとてもクリエイティブな営みに見えてきます。

これからも、メンバーさん一人ひとりの「自分でできた」を見つけられるように、日々の環境を丁寧に観察しながら、小さな工夫を積み重ねていきたいと思います。

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